「コラム」


年配の人が若い世代を嘆いて言う台詞に、「言葉遣いがなっておらん」と並んで「挨拶のしかたを知らん」があります。

あながち若い人たちばかりのことでもないと思いますが、実際、挨拶知らずは少なくありません。しかし、まさに「知らない」のであって、挨拶を無用のものと考えているわけではないはずです。

 日常的な挨拶の心得はよく、あっちが挨拶をしないからこっちもしないまでだ、と言う人がいます。もっとも、目上には「こっちから」挨拶をしているのでこれは目下または対等の人に対して言っているわけです。しかし、これは間違いです。

 目上、目下、対等に関係なく、たとえば朝まず出会ったら「おはようございます」「おはよう」と挨拶する。どちらが先かは問うところではありません。

 「目上の人にはきちんと挨拶を」と教えられるため、とにかく挨拶は下から上へのものと考えますが、そうではありません。部長が新入社員へ先に「やあ、おはよう」と言ってもかまわない。日常的な挨拶とはそういうものです。タイミングをとらえたほうから積極的にすることです。

 「おはよう」「おはようございます」と挨拶を交わすとき人は誰でも口許をほころばす、あるいは目許に笑みをたたえる、さらには会釈をしたり、片手を軽く挙げたりします。

 挨拶の台詞に表情、動作を添える。これが挨拶の形です。台詞だけの挨拶ほど不愉快なものはありません。むしろしてくれないほうがいい。だから挨拶は全身でするものです。

 その挨拶にふさわしい表情、会釈、お辞儀などの動作を添えなくてはなりません。表情とは顔のそれであり、また声のそれでもあります。よい挨拶は必ず「全身的」なものであり、しかも「自然」です。気持ちのこもらない挨拶はいくら努めても表情、動作に不自然なものが残ります。明るく全身で気持ちを込めて挨拶しましょう。

       

 




アオイ洋紙 尾道本店
小林 英昭


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