「もったいない」 


 ケニアの環境副大臣で、環境分野のまたアフリカ人女性初のノーベル平和受賞者であるワニガリ・マータイさんは、 77年に「グリーンベルト運動」(非政府組織)を創設し、植林運動を開始。単なる自然保護運動ではなく、植林を通じて貧しい人々の社会参加の意識を高め女性の地位向上を含むケニア社会の民主化に結びつけようとしました。こうした姿勢は、モイ前大統領の独裁政権に弾圧の対象とされ幾度も逮捕されました。現在ケニア全土に役1500カ所の苗床を持ち参加者は女性を中心に約8万人で植林した苗床は3000万本にも達しています。2002年、投票率98%の圧倒的支持を得て国会議員に当選し、2004年にノーベル平和賞を受賞しました。2005年2月の来日時に日本語の「もったいない」に出会い、地球環境を守る共通語として「もったいない」を世界各地に訴えています。「もったいない」とは、物の本体を意味する「勿体=物体」のことで「ない」はそれを否定したもので、本来は物の本体を失う事を指す言葉で した。また「もったいない」には重々し く尊大なさまという意味もあり、それ を「無し」にすることから畏れ多い・か たじけない・むやみに費やすのが惜し いという意味で使われるようになりま した。しかし、なによりも「もったいな い」という言葉の奧には「努力」「苦労」「時間」「歴史」などせっかく積み重ねてきたことを「失ってしまう」「無にしてしまう」ことへの無念と悲しみがあるのです。

ご飯を残したら「あーもったいない」、歴史ある古い町並みをマンションにしてしまうのは「あーもったいない」、ここまで頑張ってきてやめてしまうのは「あーもったいない」。「もったいない」の表側は物的損失を惜しむ気持ちです。いっぽう、裏側では、失ったものを手にしたり、完成させたり、そこにたどり着いたりするまでの「形には表れない大切なもの」に馳せる感謝の気持ちと、それを無にしてしまった嘆きとが一体となって、日本人独特の精神世界を形づくっていうのです。ものが溢れかえる世界には、「もったいない」という概念は存在しません。日本はもともと資源の少ない国です。貴重な資源をいかに有効に有意義に使うかといった「制約された環境」のなかで「もったいない」という意識が芽生えたのでしょう。「もったいない」に秘められたいちばん大切な心は、物を惜しむこと以上にそのものを得るまでさまざまな苦労に対する感謝と敬愛の念なのです。まさに、日本人の美徳である「もったいない」の心をいま一度よみがえらせたいものです。

 

       

 




アオイ洋紙 広島本店
藤本 直樹


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