「コラム」


 今年もあともうわずかとなりましたが、我々の業界を振り返ってみますと、「2010年は電子書籍元年」とも呼ばれ、電子書籍に注目が集まった一年でした。ipadやキンドル、最近ではシャープのガラパゴス等、多くの電子書籍端末が注目を集めました。活字離れと言われて久しくペーパーレス化が進んではいますが、電子書籍は定着するのでしょうか。  大日本や凸版等、大手出版会社もこぞって電子書籍事業に参入し動き出しました。学校現場にいたっても、文部科学省が電子教科書の取り組みを進めようとしており、2020年度にはデジタル教科書の導入も見込まれているようです。

 しかし、一見便利な反面、メリットやデメリットも多々あると思います。市場の端末などは、1台2〜5万円と高額であり、購入してすぐ使用できるわけではなく、初期設定やダウンロード(有料・無料とありますが)といった、コンピュータ関連に明るくない人にとっては煩雑な作業があります。また重さもある程度あって、本のように寝転がって読めない、液晶画面が集中しづらいなどといったデメリットもあります。ましてや学校で使うとなると、子供が壊したりなくしたりということもあることでしょう。

 一方、本を買うより、安いしかさばらない。また重量のことを考えた場合、データのみなので、電子書籍端末のみで済みます。特に電子辞書などは楽です。また、視力の悪い人には文字の大きさを調整できるなど、便利な面も多々あります。また、ipadなどは多くのアプリがありゲームを楽しんだり、ビジネス面で便利な使い方があったり、書籍と比較して利用の幅が広がっていることも特徴です。

 まだ今の段階では、紙の本に取って代わるほどのシェアの獲得には至っていないようです。ただ雑誌、新聞などの電子書籍は間違いなく増えていくことでしょうし、特に若い人達を中心に、コミックや携帯小説はシェアを広げていくことでしょう。

 少し前市内の美術館で、世界で初めて印刷機を作ったグーテンベルクの展示品を見に行きました。活版印刷なのですが、とても仕上がりの良い印刷でした。また、製本に至っては、今の技術をもってしても真似できないのではないかと思うほどの手の込んだ装丁でした。紙は見た目の感じや手触り、香りなど電子端末では味わえない良さもたくさんありますし、保存性のよさ、そして経年変化による風合いなどデータでは決して出すことの出来ない味わいもあります。我々紙に携わる者として、もっと紙の素晴らしさを感じ、伝えていきたいものです。




アオイ福原(株)
広島本店 石丸 真須己


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