「アマビエ」

「アマビエ」、ここ数か月で有名になった名前ではないのでしょうか。アマビエとは、江戸時代後期に製作されたとみられる瓦版に類する刷り物に、絵と文とが記されていて、外見は人魚のようで、鳥に似たくちばしがある。肥後国(現・熊本県)の夜ごとに海に光り物がおこったため、土地の役人がおもむいたところ、アマビエと名乗るものが出現し、役人に対して「当年より6ヶ年の間は諸国で豊作がつづく。しかし同時に疫病が流行するから、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ。」と予言めいたことを告げ、海の中へと帰って行ったとされています。

2019年末に中国武漢で発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年に入って世界的なパンデミックとなりました。2月下旬には、日本でも防疫対策として人の物理的交流も経済活動も大幅な自粛を余儀なくされました。イベントの休止や学校の休校措置などもはじまって、鬱屈した社会情勢にあった2月27日に、

「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」
「コロナウィルス対策としてアマビエのイラストをみんなで描こう」

との発想から、妖怪掛け軸専門店「大蛇堂」が、アマビエ解説と共にイラストレーション作品をTwitterに投稿したところ、この考えに賛同した多くのTwitter利用者がハッシュタグ「アマビエ」「アマビエチャレンジ」「アマビエ祭り」などを付けてアマビエを自己流にアレンジした作品を次々に投稿するという動きが起こりました。多数の作品がTwitterに投稿され、それらがリツイートされる動きは3月に入っても大きくなっていき、今ではフリーのイラスト素材も提供されるようになりました。

 2020年4月に緊急事態宣言が発令されて以後は、3月時点に較べて社会全体への自粛要請がさらに進みますが、3月以降アマビエがテレビ番組や新聞といったマスコミでも報道され、一挙に世間に広く知られる「護符」的な存在としてニュースとなった結果、創作の範囲だけでは無く各地のさまざまな事業者が「新型コロナウイルスの終息」をうたってアマビエのかたちを模した商品を販売したり商品のラベルデザインに採用したりするようにもなり、さらに広く世間に浸透していきました。4月7日からは厚生労働省が新型コロナウイルス感染症のWeb向け対策啓発の広報アイコンとしてアマビエのイラストを用いはじめ、目にする機会が増えました。

今の新型コロナウィスルに対して様々な事で四苦八苦する現状を少しでも改善したいという思いが、この「アマビエ」人気になっているのだと思います。数か月後か数年後か分かりませんが、アマビエという名前を聞くと、あの頃は大変だったな、と笑って振り返る時が来るまで皆さんそれぞれ対策して乗り越えていきましょう。        

アオイ福原(株)
福山支店 井上 宜幸

戻る