「シェアハウス」

 家をシェアして誰かとともに住んだりひとつ屋根の下で他の家族と空間を共有したり。他人や他の世帯との距離感が近い暮らしを選ぶ人が増えている。家で過ごす時間が増えた今、心地よい住まいとは高級な家具やきれいに片付いた部屋のことだけではないかもしれない。あなたにとってのホームとは何?

 住まいは、そのときの社会のありようを映し出す。江戸時代の長屋は、商人や職人といった庶民の暮らしを、戦後、都市で働く中堅勤労者向けに供給された公団住宅は、夫婦と子どもの標準世帯の生活を思い起こさせる。長い景気低迷を経て、少子高齢化が進み、単身世帯も増えた。シェアハウスが映し出すのは、「どうしたら日常を豊かにできるのか。改めて考えようとしている今の状況では」と考えられる。

国内でシェアハウスは増え続けている。日本シェアハウス連盟によると、全国に約5000棟あるという。もともと外国人の中長期滞在向けに始まったが、「2000年くらいから日本人の住居者が増え始めた」とのこと。当初、人気の理由は家賃を抑えられる点だったが、そんな様相は変わりつつある。

 30〜40代を中心に、他人やほかの家族と近い暮らしを選ぶ人が増える背景として、「年功序列や終身雇用、それに伴う住宅購入といった従来的な人生設計にはなから価値を置かない人が増えている」ということがあげられる。

 既存の社会秩序や枠組みが崩れる中、重視するのは「組織や所属ではなく、人間としての魅力や、自分にとって居心地がいい関係性」だ。それが住まいの選択にも現れているのだろう。知らないもの同士がひとつ屋根の下で暮らす。リビングやキッチン、お風呂などを共有し、まさに家族で家をシェアしている感じ。長く住み続けていれば、居心地の良い人たちといられる安心感になる。いつの間にか何でも話し合えるようになる。まさに友達以上家族未満のシェアハウス。

                 

アオイ福原(株)
広島本店業務部

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